わたしの読書あれこれ(その44
諫山 禎一郎
 年末年始にかけて、わたしの好きなクラシック音楽のコンサートにいくつかでかけた。十二月十日午後、三鷹市の国際基督教大学礼拝堂で行われたのは、ハープ奏者・吉野直子のバッハのパルティータの独奏と、東京少年少女合唱隊のクリスマス・キャロル合唱であり、楽しいクリスマス・コンサートであった。この大学は、旧中島飛行機三鷹研究所跡地に建てられ、今も残る武蔵野の林の中にあり、広くゆったりとしたキャンパスがすばらしい。彼女は、同大学の卒業生である。礼拝堂には大きなパイプオルガンがあり、春秋にはこれを使ったコンサートが数回あり、わたしは会員になっているので、案内がくる。昨年はオルガンが奉献されてから三十年経つので、会員には過去のコンサートの録音CDを配布した。これには、林祐子(オルガン)、吉野直子、ハインリッヒ・シュッツ合唱団などの演奏が入っている。ちなみに当日の入場料は、千五百円だった。
 同日夜は、上野の東京文化会館でプッチーニのオペラ「トゥーランドット」が演じられた。これは入会している都民劇場の定期公演で、出演者はブルガリアのソフィア国立歌劇場の管弦楽団と合唱団で、主演はマリア・カラスの再来といわれるマリア・ドラゴーニ、壮大な舞台装置が特色で中国王朝を題材にした作品であった。ほかにアンナ・クオという日伊混血の若い女性が目をひいた。彼女は松本美和子を母にもつ才能ある人で、わたしは彼女の独唱会を昨春聴いて、その前途を嘱望している。
 十二日夜は、池袋の東京芸術劇場での立教大学の第三十九回メサイア・コンサートに行った。これは、佐藤功太郎・東京芸術大学教授の指揮のもと、独唱には山口道子、栗林朋子、中村健、平野忠彦、チェンバロに山田貢、トランペットに山崎聡というプロが揃い、同大学のオーケストラ、グリークラブ、聖歌隊など学生中心に三百名以上が出演した。今回はNHKテレビ英会話講座の鳥飼玖美子教授も、ソプラノ・パートに出演していた。わたしの友人もアルト・パートに、ここ数年出演しているが、その人は博物館講座の科目等履修生のとき参加したのをきっかけに今も歌っている。また有名なハレルヤ・コーラスの時は、聴衆も配られた楽譜を手にして一緒に歌うことになっている。今回同伴した知人は、ベートーヴェンの第九の合唱もいいが、このヘンデルのハレルヤ・コーラスは歌いながら感激する名曲だといっていた。この音楽大学でもない一般大学が行う全学コンサートとしては、類のないものだといわれている。岩波新書の「バッハ」の辻荘一、長崎県の隠れキリシタンの「オラショ紀行」(日本基督教団出版部)や中世・ルネサンス音楽研究の皆川達夫といった名物教授が、終演後に聴衆とともに歌うクリスマス賛歌「神にはさかえ、地にはおだやか」の指揮も思い出深い。入場料は、S席二千五百円だったが、すぐ売り切れるので、いつも早めに予約している。ヘンデルといえば、昨春都民カレッジという東京都の外郭団体が主催する講座で、渡部恵一郎桐朋学園音楽大学教授の「ヘンデルのオペラとオラトリオ」を聴講し、彼の偉大さを学んだ。オーディオ・ビジュアルを駆使した内容の濃い講義であった。
 年明けた一月五日夜、わが家から徒歩十五分にあるパルテノン多摩という多摩市営ホールで、飯守泰次郎指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団のニューイヤー・コンサートにでかけた。出し物は、白尾明と早川りさこのモーツアルト「フルートとハープのための協奏曲」と、シュトラウスのワルツとポルカの数々。かのウィーンのニューイヤー・コンサートを思い起こさせ、新春にふさわしいウキウキした気分になってしまった。アンコールは、聴衆の手拍子入りのラデッキー行進曲とくれば、文句なしであった。入場料は格安のB席千五百円だった。このホールは、建築後十年位であるが、前述の新日本フィルの定期公演もあり、内外の演奏家が多数来ている。前述のアンナ・クオもここで聴いた。一番印象に残っているのは、世界的なコロラトゥーラ・ソプラノのエディタ・グルベローヴァが姿を現したことだった。彼女は大の日本びいきだそうで、毎年のようにわが国を訪れている。都民劇場の定期公演で一度聴いたことがあり、その絶妙なる高音に魅せられ、以来ファンになっているので聴きに行ったが、この時も満足した。彼女のCDも早速求めた。
 今年も、これはと思うコンサートにでかけ、CDを探し、音楽史をさらに学びたいと思っている。(二○○一年一月)