| わたしの読書あれこれ(その23);第十四回目 | ||||
| 諫山 禎一郎 | ||||
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一月十五日、新宿紀伊国屋サザンシアターに俳優座公演「千鳥」を見に行った。これは、俳優座の若手女優の花村明さんが出演していて、彼女から案内があったからである。彼女の父花村靖君が、嘉穂東高校でわたしと同期生であり、彼女は数年前に近畿大学付属女子高校を卒業して上京し、俳優座の一般公募のオーディションに合格した人である。平成八年春に、俳優座の出し物として有名なチェーホフの「桜の園」のアーニャ役に抜擢され、その前途を嘱望されている。この役は、岩崎加根子など俳優座の看板女優たちが演じた新人の登竜門ともいえる役である。その後、「村岡弥平次伝」にも出演したので、これも見に行った。 この「千鳥」は、俳優座創立五十五周年記念の田中千禾夫・東野英治郎・伊藤喜朔追悼公演であった。「千鳥」は、田中の原作で、東野の主役、装置の伊藤で昭和三十四年に初演され、四十二年に再演、今春三演された。今回は、児玉泰次が自我の強い主役を演じた。助演もベテランの大塚道子などが盛り上げていた。明さんは、終盤近くの花傘踊りに出演していた。公演終了後、楽屋に本人を訪ねたら、舞台と同じような愛くるしい笑顔で応対してくれた。何か自分の娘にでも会ったような気がした。この後、五月には東京・六本木の俳優座劇場で栗山民也演出の「ロボット」に出演する。 このように、わたしは郷土出身者の公演には、都合がつけば出かけることにしている。その中では、まず嘉穂東高校の同窓生の岡本麗さん。本名は、戸塚あけみさんという。人気の連続テレビドラマ「はぐれ刑事純情派」の田崎婦警役、あの人かと思う人も多いと思う。また、平成七年夏に一人芝居「戦う女」を東京・世田谷・下北沢のミニシアター・ザ・スズナリで初演した時、見に行った。これは、その後東京周辺各地で上演され、福岡市でも上演された。福岡の時は、嘉穂東の同窓生が応援したそうだ。彼女の演技で、思い出に残るのは、平成七年秋に東京・帝国劇場での林真理子原作「白蓮れんれん」(最近、中公文庫にも入った)の女中サキの役である。母校の創立者伊藤伝右衞門・柳原白蓮にまつわる劇で、全出演者中一番本物の九州弁をしゃべっていたのではないだろうか。平成八年春の嘉穂東高校同窓会東京支部総会に姿を見せたが、あの活発な話しぶりに記念撮影のリクェストする人が多かった。父君が麻生鉱業に勤務されていたそうで、飯塚市芳雄に住んでいたとか。 また、昭和五十五年に亡くなった前進座の杣英二郎さん(本名杣山英嶷氏)は、嘉穂中学四一回昭和十八年卒の方で、夫人杣山紀久子さんも嘉穂高女の卒業生で同窓会にもよく出席されている。杣さんが、お元気だった頃、今は無くなった銀座の割烹玄海(水嶋由美子さん・嘉穂高女卒業の経営だった)で歓談したことがある。当夜は前進座の公演が有楽町・読売ホールであり、終演後のことだった。俳優座のベテラン俳優・矢野宣さんも一緒だった。矢野さんは鞍手の出身だとか、九州弁での軽妙なやり取りを思い出す。この杣夫妻の娘の久美さんは、東京育ちであるが、オープン・セサミという劇団を結成し、もう一人と組んでRONE & Gigi と称し、クラウン(道化師)なる劇を始めてから数年経つ。クラウンというのは、いろいろなタイプがあり、チャップリンやキートンもクラウンの一種で、サーカスや遊園地などにいるパントマイムをするピエロもクラウンだそうだ。東京・新宿のミニシアター・モリエールを中心に、年に数回の公演がある。この劇を初めて見た人は、笑いとペーソスに満ちた演技の虜になる。公演中に、観客を客席から舞台に上げ演技をさせるのは、いつものことなのだが、わたしも一度不運にも引っぱり出され、汗ビッショリかいたことがある。このクラウンは、旧ソ連が本場だそうで、彼女もキエフのサーカス・クラウン・エキスラーダ学校に留学して研鑽を積んだ。昨年は、大隈小学校でも公演があったそうだ。今春二月には、横浜・相鉄本多劇場で公演があったが、春夏はイギリス、カナダに公演旅行し演技に磨きをかけ、九月に東京新宿で公演の予定だ。久美さんは、高野呂音(ロネ)のペンネームで、雑誌テアトロにエッセイを書いているそうだ。 わたしの知っている嘉穂飯塚出身者・関係者は、このように活躍している。ぜひとも、飯塚で公演があればと思う。関係者のご支援を期待したい。どうぞ皆さんお贔屓を。(一九九九年五月) | ||||